『Harold Halibut』ってどんなゲーム?

・ストップモーションアニメ調のレトロフューチャーなアートが光るSFアドベンチャーゲーム
・海底に沈んだ宇宙船に地球からの通信が届く、ロマンあふれるプロローグ
・移動・会話・演出のテンポは全体的にもっさりしており、人を選ぶ
・序盤のお使いパートを乗り越えれば、引き込まれる世界観と劇的なドラマが待っている!

公式サイト

ゲームレビュー

本作の舞台は、滅亡しそうな地球から脱出して水で覆われた惑星に不時着、海底都市となった宇宙船です。
海へと沈んでから数十年経った船内は、「オールウォーター社」という組織を中心にたくましく生活していました。
そんなある日、途絶えていたはずの地球から一通の通信が届きます。

「地球は生き残った」

状況が沈静化し、概ね元通りに戻ったらしい地球への帰還を目指し、オールウォーター社と学者たちはフェドラ号で再び宇宙へ行く方法を模索しはじめます。
しかし、再打ち上げが可能な期限は3ヶ月を切っており、それを逃すと次は80年後……。
それまでに船の動力となるエネルギー源を見つけ出さなければならないという状況です。

主人公は、船内の便利屋として働く青年ハロルド。
教授や住民たちのお使いをこなしつつ、ぼんやりしながら漠然と日々を過ごしていました。
地球への帰還騒動にもどこか上の空だった彼の元に、ある出会いが訪れます。
これが彼の人生を動かし、ひいては宇宙船の命運を決めることになっていくのです。

……いい感じですよね。
SFが好きな方には、ちょっぴりわくわくしちゃう始まり方です。

序盤のテンポの悪さは難点。しかし乗り越えた先に見える魅力

さて、本作のアウトラインをお伝えしてきましたが、とても大事なことをまだ書いていません。
それは、全体的なゲームテンポの悪さです。
とにかく動きがもっさりしており、なかでも歩く速度が遅く、序盤はキレそうになりながら進めていました。
(後に走れることがわかり、多少落ち着きを取り戻しました)
移動と対話がゲームプレイの大半を占めるアドベンチャー作品において、このレスポンスの重さは好みが分かれるかなと。

さらに、前半はお使いイベントが多いこと、主人公のやる気がないこと、カットシーンでの会話がゆっくりめということもあり、かなりの脱落者を生みそうな印象がありました。
のんびりとしたゲームといえば聞こえは良いですが、悪くいうとプレイヤーの心を掴まねばならない序盤が一番つらい作品でした。

ただ、地球からの通信によって物語が動き出し、主人公がとある遭遇によって自分の意思を出すようになる中盤あたりから、プレイヤーもやる気が出てくるはずです。
さらに、謎めいたストーリーと緻密な世界観が噛み合いはじめると、「ええい!こうなったら多少の不自由さをのんびり味わうのも良いかもしれない」と方向転換して楽しめました。

ユーモアのある会話劇と独自のアートスタイルがクセになる

メインストーリーはクリアまで11時間くらい。
海底に沈んだ宇宙船という小さな舞台の作品ですが、個性豊かな住民たちとのエピソードが詰まっているので、しっかり遊んだ体感がありました。

キャラクター同士のやりとりは、全体的に穏やかだけどユーモアもある印象でした。
哲学的なようなそうでもないような会話のなかでたまに良いことをいう……明るめのヒューマンドラマ映画を観ているような感じです。
彼らは地球帰還に関する話はもちろんしつつ、個人がそれぞれ何かしら悩みを抱えているので、続々と主人公に相談を持ちかけてきます。
新しい店がうまくいかない、妻に見放されている気がする、やりたいことが見つからないなど。
一見すると重たそうな問題ばかりなのですが、会話とお使いだけでさくっと解決します。
次から次へとトラブルが生まれては収束していくため、「移動は面倒だけど困っている人は放っておけない……!」と妙にやる気を出してプレイしていました。
それから、学者系の人物が多いので、小難しい表現もわりと見受けられましたが、理解できなくても進められるので問題ありません。

ここまでまったく触れていなかったのですが、ストップモーションアニメのようなアートは圧倒的な存在感を放っていました。
キャラクターも背景もすべて手作りされているそうで、実在するからこそのリアルな空気感が出ていました。
宇宙船は海に沈んでいるので居住空間は狭く、閉塞感があります。
しかし、魚や別の区画がぼんやり見える大きな窓がたくさん設置されているため、海中なのに苦しさではなく、こんな場所でもタフに生きているぞという雰囲気が感じられて良かったです。
ちなみに、オールウォーター社が管理しているとありましたが、ディストピアっぽさはありません。
レトロフューチャーな空間という印象が強く、設備は古いけどシステムは未来的という実にいい感じのデザインでした。

キャラクターは、一度見たら忘れない見た目も中身もクセの強い人物がずらり。
ストップモーションアニメのようによく動きますし、フルボイスなのでよりインパクトがありました。
特に主人公は、最初こそ死んだ魚のような目だったのに、徐々に凛々しくなっているような感じがして良かったですね。
あと、相棒も可愛かったです。

さいごに

全体的にテンポが悪く人を選ぶ作品ですが、ひとたびハマれば一気にプレイしてしまう中毒性のあるアドベンチャーゲームでした。
私も移動の遅さと序盤のお使いイベント連発で、気になるストーリーが進まずにヤキモキすることもありましたが、気がつけばクリアまで駆け抜けていました。
ストレスはもちろん感じたものの、終わってみれば結構楽しかったなと感じています。

すぐに倍速、どこでもファストトラベル、シーンはスキップ可能と急ぎ足なゲームに慣れてしまっていた昨今。
「そういえば昔のゲームって、ちょっと不便だったり、長いムービーシーンをゆっくり鑑賞したっけなぁ」と、懐かしい気持ちを思い出させてくれるゲームでもありました。

ぜひ、このあとお急ぎの予定がない方は、のんびりとした気分でハロルドのちょっとした、でも大事になっていく世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

ABOUT ME
たこ
積みゲーマーです! ジャンルはRPG・アドベンチャー・パズルが好きですが、とりあえず気になったものは全部やる!! 読みやすくて前向きなレビューになるように心がけています! 連絡先▷info@tsumige.net