レビュー

WILL: 素晴らしき世界 [Switch] 評価・レビュー

『WILL: 素晴らしき世界』ってどんなゲーム?

・手紙に書かれた出来事(文章)を入れ替えて、運命を変えていくアドベンチャーゲーム
・複数のキャラクターの物語が同時に進行するためゲームのテンポがよく、次から次へと新しい展開が楽しめる!
・文章の入れ替えによる分岐は予想しづらく総当たりになりがち。アグレッシブな残虐描写(文章表現のみ)も苦手な人は注意!
・おしゃれなインターフェースや静かな音楽など、作品全体を包み込む落ち着いた雰囲気は素晴らしい!

公式サイト

ゲームレビュー

本作は、神さまに届く手紙の文章を入れ替え、人々の運命を変えていくアドベンチャーゲームです。
手紙のテキストを入れ替えて、物事が起こる順番を変更することで、手紙を出したひとの運命が変化。
複数の運命が交差し、思わぬ方向へと展開する機会もある、『428』のようにザッピングするパズル要素をもった作品です。

登場するキャラクターたちは、暗い過去を抱えた画家、青春真っ盛りの女子高生、オタクな青年、正義に燃える熱血刑事、故郷を離れた姉弟、そして野良猫などバラエティ豊か。
さまざまな人々の運命を変えていくにつれ、それぞれの物語が少しずつ交差し、やがて主人公と相棒の犬の日々にも変化が起きていくという物語です。
なお、PS4/Switch版がリリースされています。

残虐描写が多めですが、文章の入れ替えによる運命操作は斬新で楽しい

本作では手紙に書かれた人々の願いを、テキストを入れ替えることで叶えてあげる、というほのぼのしたテイストが想起されるゲームシステムです。
しかし、中身は容赦ない残虐描写のオンパレードでした!w
キャラクターがばんばん死ぬのはもちろん、いろいろな部位がちょん切れてしまったり、痛い・苦しいというメンタルに訴えてくる表現もがっつりあります。
こうしたアグレッシブな描写は、グラフィックではなく文章のみで描かれるので直接的な表現ではありませんが、苦手な方は注意してくださいね。

さて、それぞれのキャラクターの物語は、送られてきた手紙をベースに進行します。
物語の展開はコミカルな日常、死と隣り合わせのハードな戦い、切ない恋模様、どこまでの絶望が続く暗く重たい生活など多彩ですが、全体的に死にやすい傾向にあります。
ただ、そうした厳しい状況を乗り越えたそれぞれの結末はしっかりと描かれているため、すっきりとした読後感が得られ、満たされた気分でクリアを迎えられました。

さらにプレイを進めていくと、複数キャラクターの手紙を同時に開封し、それぞれの内容を入れ替える状況が発生します。
キャラクター同士の行動が、お互いの未来に影響を与えるというのは他のゲームでも見られますが、本作ならではの特徴として、「手紙に書かれた出来事(文章)」の入れ替えがあります。
通常、行動が影響を与えるためにはキャラクター同士の接点が必要ですが、本作では手紙に書かれている出来事そのものを入れ替えてしまうため、Aのキャラの「転んだ」という事象を、Bのキャラが「転んだ」とできるのです。
もちろん、直接関係するキャラクター同士の入れ替えもありますが、まったく関わりのないキャラクターたちの身に起こった出来事を入れ替え、結末を変化させられるのは本作の醍醐味かとおもいます。
たとえば、一方は死ぬか生きるかの瀬戸際なのに、もう一方はお風呂場でやりとりをしている、といったカオスな状況も度々発生する感じです。
どのキャラクター同士が関係するか分からないので、「次は誰の手紙が来て、どんな状況になるんだろう」とわくわくしながら先を想像してプレイできました。

分岐が総当たり、エンディングが唐突など不満点もあり

前項では本作のゲームシステムの良い点を紹介しましたが、気になる点もありました。
それは、手紙に書かれた出来事の並び替え・入れ替えた結果はわかりづらく、大体の場合において総当たりで挑まなければならないことです。
ひとつの手紙のさまざまなエンディングが用意されているのはおもしろいのですが、文章で表現された出来事からその後のストーリー分岐を予測するのはむずかしく、想像していたようにならないことも多々あり。
結果的に、正解にたどり着くまで作業的に組み合わせを試すようなプレイスタイルになってしまい、せっかくの多彩な分岐もストレスを感じてしまう印象でした。
また、かなり難易度の高い分岐も後半かけて用意されており、ノーヒントでクリアするのはなかなかハードルが高い点も気になりました。

ストーリーは序盤から中盤にかけては素晴らしく、特に中盤で行われる大きな変化はルート分岐アドベンチャーのメタ的な表現になっており、刺激的でとても楽しめました。
ただ、エンディング付近では唐突な情報によって主人公の物語が大きく変化するため、置いてけぼり感があり。
キャラクター個々の物語はしっかりと完結していただけに、主人公の物語もすっきりと終えられるとより良かったとおもいます。

あと、キャラクターの名前は中国名の方が多いのですが、ふりがなが振られていないため読み方がわかりませんでしたw
特に複数のキャラクターが出てくるルートでは、覚えづらくて誰が誰だかわからないこともあり、キャラクターの魅力を少し損ねていたのはもったいないポイントでした。

イントロから始まるゲーム全体の雰囲気は素晴らしい

不満点もありましたが、おしゃれなインターフェース、落ち着いたテイストの音楽、さまざまな展開を通じて描かれる魅力的なキャラクターたちなど、ゲーム全体の雰囲気は最高でした。
また、手紙に描かれた重要なイベントシーンではしっかりとスチルも入るため、感動的な場面をより印象的に演出できていたとおもいます。
個人的には、グロ描写が苦手ではないので、本作の挑戦的な表現の数々は読んでいてわくわくしましたw
ゲームクリアまでは15時間ぐらいで、全ルートをコンプリートするためにはさらにプレイできるので、かなりがっつり遊べる点もいいですね。

あと、ゲームをスタートすると「お好きなドリンクとイヤフォン装備でプレイするのがおすすめ」という注意書きが表示されます。
ちょっとしたことではありますが、このような作品のテイストに合わせた心遣いが感じられるアナウンスは、ゲームのプレイ体験をより高めてくれるのでとても良いとおもいます。

さいごに

手紙の出来事を入れ替えるパズル要素が楽しく、個性的な物語が楽しめるキャラクターたちと落ち着いた世界観が魅力のアドベンチャーゲームでした。
分岐が総当たりだったり、残虐描写が多いといった気になるポイントはあるものの、苦手でなければおすすめしたい作品です。
たっぷりのゲームボリュームが用意されているので、ぜひじっくりと腰をすえてプレイしてくださいね。

ABOUT ME
たこ
積みゲーマーです! ジャンルはRPG・アドベンチャー・パズルが好きですが、とりあえず気になったものは全部やる!! 読みやすくて前向きなレビューになるように心がけています! 連絡先▷info@tsumige.net