レビュー

ワールドエンド・シンドローム [Vita] 評価・レビュー

『ワールドエンド・シンドローム』ってどんなゲーム?

・田舎町を舞台に、青春を謳歌しながら怪異事件に巻き込まれていくミステリーアドベンチャーゲーム
・周回プレイによって謎が深まり、真相できっちり伏線を回収していくシナリオは見事!
・キャラクターのエピソードも豊富で、ルートごとに異なる新鮮な気持ちでプレイできる!
・マイナスポイントはセーブが任意のタイミングでできない、イベント以外はパートボイスであること
・背景・キャラクターグラフィックは美しく、特に背景は一部のオブジェクトが動くことで独特の雰囲気づくりが良い!

公式サイト

ゲームレビュー

本作は、アークシステムワークスさんがおくる、田舎町を舞台にした青春×ミステリー×恋愛アドベンチャーです。
「100年に一度死者が蘇る」という古い伝承が残る町に引っ越してきた主人公が、青春を謳歌しながら徐々に町の過去や怪異事件に巻き込まれていくという物語。
はたして、生者に紛れ込んだ死者は誰なのか、訳ありなヒロインたちの思惑とは、そして町で起こる事件の真相とは……。
なお、PS4/Vita/Switch版がリリースされています。

周回プレイで謎を深め、徐々に真実へと至るシナリオは秀逸

「100年に一度死者が蘇る」という古い伝承が残る田舎町を舞台にした、青春×ミステリー×恋愛アドベンチャーゲームです。
町に引っ越してきたばかりの主人公は、暗い影を背負いながらもミステリー研究会の仲間と交流し、青春を謳歌できるようになっていきます。
しかし、次第に町の過去に隠された秘密や不可解な事件に巻き込まれることになり、ヒロインたちもどこか怪しい様子に……。
本当に死者は紛れ込んでいるのか、ヒロインたちはどんな秘密を抱えているのか、そして事件の真相を描くひと夏の物語です。

ゲームは、夏休み開始前の序章と、8月1日~31日の本編に分かれており、2周目以降は本編からプレイが可能。
1周は2時間弱と、手軽なボリュームでプレイできます。
基本的なプレイサイクルは、マップから行きたい場所を1日3回(午前・午後・夜)選択、訪れた先で共通・個別イベントを見ていくという流れ。
エンディングですが、初回はバッドエンドが確定しており、2周目以降は5人のヒロインルートが開放され、最後に真相編にたどり着くという流れです。
この各ヒロインルートですが、見られる順番はある程度決まっているため、シナリオ全体としては一本道のような感じでした。

さて、肝心のシナリオについては、周回するごとに謎が深まる一方、明らかになってくる町の真実もあり、ルートによって新しい発見が楽しめる秀逸な作品でした!
伏線も張られており、真相編でしっかりと回収していくのも鮮やかで読み応えがあります。
さらに、冒頭にムービーがあるのですが、周回ごとに変化して真相へとつながっていく演出もおもしろかったですね。
そうしたミステリー部分のよさにくわえ、ヒロインがらみのエピソードは恋愛だったり成長だったり、伝承のまつわる話が展開したりとバリエーションがあるので、自然に全員のルートを見たくなる作りとなっていたとおもいます。

残念だったのはイベントのみフルボイスで、それ以外はパートボイスであること。
昨今フルボイスの作品が多いなかで、アドベンチャーゲームでありながらパートボイスなのは少し物足りなく、セリフに合っていない場面も見受けられました。
あと、エンディングまでのシナリオはとてもすばらしかったのですが、ラストで唐突に続編をおもわせるような描写があり、不要だったかなとおもいます。
まぁおまけ程度のシナリオなので本編には影響がありませんが、すっきり終わらせたほうが気持ちよくプレイを終えられたのかなと。

グラフィックは美しく、特に背景が見どころ

グラフィックについては、イベントスチル・キャラクター・背景ともにクオリティが高かったですね。
イベントスチルは、各ヒロイン10枚前後と充分なボリュームで、構図のかぶりもなく見ごたえがありました。
ヒロインたちといえば、それぞれ悩みや思惑を持って行動しているため個性が強く、ルートによってそうした隠された一面が垣間見られるのもおもしろい点でした。

キャラクターは目パチ口パクがあり、立ち絵のイラストは正面だけでなく、横向き・後ろ向きも用意されていました。
これはシーンに合わせて切り替わるため、キャラクターと目線が合わなくなることで意味深な雰囲気が出たり、背中を見せることで遠回しに拒絶をしているような感じだったりと、リッチな表現ができていたとおもいます。

背景グラフィックは丁寧に描かれており、田舎町ならではの異世界感を醸し出していました。
本作は世界観のモチーフとして「風ぐるま」があるのですが、背景に描かれた風力発電所や軒先にある風ぐるまがくるくると回っており、現実と非現実の合間のような独特の空気が感じられました。
動きといえば、風鈴や扇風機、灯りに寄ってくる虫やモービルといった背景にある一部のオブジェクトが動いているので、奥行きを感じられる点も良いポイントかなとおもいます。

自由にセーブができないシステムなど、不満点もあり

システムでは、任意のタイミングでしかセーブができない点が気になりました。
先述のとおり、本作は1日ごとに3回の行動を選択して進めていきますが、日をまたぐタイミングでしかセーブが行なえません。
本作はアドベンチャーゲームなので、選択肢によってルートや会話が分岐するため、重要な選択肢の直前にセーブができないのはストレスになるかなと。
ただ、1日あたりのプレイ時間は短いので、毎日セーブしておけば巻き戻り回数は軽減できるとおもいます。
(ちなみに、私はセーブをサボってしまい、1週間ぐらい戻ったりもしました!w)

やりこみ要素としては、特定の場所を訪れてアイテムを手に入れる「コレクション」、誰かのお願いを聴いてあげる「ミッション」があります。
コレクションはミニイベントで、20種類もあるため、コンプリートするには周回プレイは必須。
ミッションはちょっとした交流イベントになっており、攻略対象以外のキャラクターのシナリオもあるので、サイドストーリー的な位置づけとして楽しめました。
余談ですが、個人的にはフォントがとても読みやすい字体でよかったこともお伝えしておきます。

さいごに

ゲームシステムと唐突なおまけシナリオに不満はあるものの、本編の完成度は高く、ミステリーとしても伏線をしっかり回収しながら周回させていたとおもいます。
私は特に背景グラフィックを評価しており、ひと夏の青春とミステリーをまとまりよく楽しめる良作アドベンチャーゲームでした。

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たこ
積みゲーマーです! ジャンルはRPG・アドベンチャー・パズルが好きですが、とりあえず気になったものは全部やる!! 読みやすくて前向きなレビューになるように心がけています! 連絡先▷info@tsumige.net