『アサシン クリード ヴァルハラ』ってどんなゲーム?
・ヴァイキングをテーマにしたオープンワールドアクションRPG
・冒険感が得られる探索は楽しい!でもロケーションは似たような場所が多い
・ストーリーは神話との絡みが多く、終盤はファンタジーに。目的が曖昧で達成感が弱い
・略奪や豪快な殴り合いが楽しめるが、もはやアサシンではない
・ハクスラ要素はなくなり育成はスキルツリーに変更。やりこみはアプデで追加されたレイドなどに移行
・アクションRPGとしてのクオリティは高いが、ストーリーやステルスが好きなプレイヤーには物足りない
ゲームレビュー
記事の目次
本作は、中世ヨーロッパで活躍したヴァイキングがテーマのオープンワールドアクションRPGです。
主人公はヴァイキングのエイヴォルで、首長である兄シグルドや仲間とともにノルウェーからイングランドに旅立ち、新天地での勢力拡大を狙います。
シリーズとしてはバトルアクション寄りの作品で、前作まであった武器のハクスラがなくなり、育成はスキルツリー形式に変更。
拠点となる定住地を立派にしたり、アップデートで期間限定イベント、レイドや強敵とのバトルが追加されています。
なお、本作はPS5/PS4/Xboxなどで発売されています。
ちなみに、私は前作の『アサシン クリード オデッセイ』は持ってるけど未クリア。
自分のレベルに合わせて敵のレベルが上がるシステムが苦手で、緩和できるものの放置しちゃってます(やらないと)。
アクションRPGになった前々作『アサシン クリード オリジンズ』の感想は以下。
ストーリーがとてもよく、古代エジプトの神秘的な雰囲気や広大でさまざまな景色を見せてくれる砂漠のロケーションも素晴らしく、ボリュームも手頃なのでおすすめです。
アサシンらしくはない。ステルスアクションもない。
本編に入る前に……突然ですが、私は「アサシン クリード」シリーズのステルスアクションが好きです。
そもそも隠れるというアクションが好きで、単独潜入のストイックさとドラマチックな物語が楽しい「メタルギアソリッド」、おしゃれな舞台で変装ができる「ヒットマン」、サイバーガジェットを駆使する「ウォッチ ドッグス」、ポリゴンの透過を使ってインチキした「天誅」など、いろいろな作品をプレイしてきました。
そのなかでも「アサシン クリード」シリーズは、パルクールを使った高低差のある移動が楽しくて、見つかっても上手に逃げられたり、高所から敵を倒したりと躍動感のある点が魅力だとおもっています。
ただ、エジプトを舞台にした『アサシン クリード オリジンズ』からゲームシステムが刷新され、ステルスアクションではなくアクションRPGになりました。
具体的には、ボスと1v1でゴリゴリに殴り合ったり集団戦があるなど、隠れる機会が徐々に減ってきているのです。
それはそれでもちろん楽しいのですが、ステルスアクション好きとしては少し寂しいポイントでもあります。
(余談ですが、私は海賊をテーマにした『アサシン クリード4 ブラッグ フラッグ』が一番好きで、吹き矢でこっそり潜入したり、大海原を航海中の船を手当り次第襲いまくってました)
そうしたシリーズの流れがあるなかで、本作では「敵に発見されていない状態なら一撃で倒せる」というオプションが追加されました。
これには「また隠れて敵を1体ずつ倒していくあのステルスアクションが楽しめるのか!」と、めちゃくちゃテンションが上がったのです。
しかし残念なことに、本作は戦闘と略奪をもりもり行う「ヴァイキング」がテーマになっているので、基本的にステルスはしません!
角笛を吹いて船着き場に乗り上げ正面から突撃したり、城や砦にある門をぶち破ったり、武器やアビリティを使って強敵とがっつり殴り合ったり。
……もはや全然アサシンしてないじゃん!
というわけで、先述のようなステルスアクションを使うシチュエーションはあまりなく、システムとしては用意されているものの、基本的には最近のアクションRPG路線の作品でした。
まぁ別の悪くはないのですが……やっぱりアサシンしたかったな。
冒険しているような感覚を得られる、探索が楽しいオープンワールドゲーム
長々と前置きを書きましたが、『アサシン クリード ヴァルハラ』はオープンワールドのアクションRPGとしては3作目となり、随所に洗練さを感じられるクオリティにまとまっていました。
特に、探索がとても楽しくなったのは良い点です。
オープンワールドゲームの多くは、広大なフィールドを移動してイベントをこなしたり、アイテム集めを行います。
これを繰り返していると作業感が強くなり、面倒と感じるプレイヤーも多いですよね。
本作ではそうしたマンネリ感の軽減のため、イベントの多くにストーリー(独り言のときもある)が用意されており、訪れた意味を得られるようになっていました。
また、クセの強い民も多いので、登場したのは一瞬なのに本編の重要人物より印象に残る人もいるのもおもしろいポイントですw
選択肢によって結末が分岐するイベントもあったので、自分だけの物語を楽しめる感じもあり、次のイベントに出会うのを楽しみにプレイできました。
また、財宝などのアイテム集めでは、ただその場所を訪れるのではなく、見つけるまでのプロセスが工夫されていて良かったです。
具体的には壁を壊す、秘密の通路を見つける、氷を割って潜るなど。
隠し方や道中にバリエーションがあり、時に頭を使うようなパズルっぽくもなっているので、シリーズのなかで最も冒険している気分が味わえました。
その他にはラップバトルである口論詩、特殊なサイコロを使ったミニゲーム、飲み比べ、狩りや釣りなど、アクティビティも充実。
イングランドにおける激しい略奪や、洞窟探検などに疲れたときの息抜きになっていたとおもいます。
ただし、操作性が微妙なのに難易度がめっちゃ高い石積みと、突然シビアなジャンプアクションを要求されるアニムスの異常現象の調査が無駄にむずかしかったことは、声を大にしてお伝えしておきたいです!w
1時間以上石と格闘するケースもあって「さくっとクリアできるレベルじゃだめなの?」と、キレながらプレイしていましたw
ハクスラ要素からスキルツリーに育成は変更。バトルでは多少ステルスがいる
バトルはアクションRPGになった過去シリーズを踏襲していますが、オデッセイ・オリジンズにあったハクスラ要素は削除されました。
個人的には武器を厳選する手間がなくなったので、遊びやすくなったかなと。
その分、育成は広めのスキルツリーを成長させていくようになり、ステータスやアビリティを獲得していくというシステムになりました。
ただ、このデザインには難あり。
どこからでも自由に開放できるため、どのアビリティが強いのかひと目でわかりづらく、何を目標にして良いのか混乱してしまうとおもいます。
過去シリーズで採用されていた樹形図のように、先に進むにつれて強いものになる段階的な構図の方が育てやすかったです。
ちなみに、がっつり殴り合うのが苦手なので、一番低い難易度の「スカルド」でプレイ。
斧や大剣持って、出会い頭に殴り倒していけるだろうとおもったのですが、敵がたくさんいる野営地に突撃したらタコ殴りにされました。
いかに屈強なヴァイキングといえど、多少は各個撃破の立ち回りやステルスは必要な感じはあります。
ただ、後述していますがそもそも隠れられるような高い建物があまりなく、敵の数も多いので、基本的にはすぐ殴り合いになりますw
ロケーションは時代ゆえにバリエーションが少ない。定住地は育つのが楽しい!
本作では、イングランドを舞台にした大きなオープンワールドだけでなく、雪と氷に閉ざされたノルウェー、未開の地ヴィンランド、神話の世界アースガルズと小さめの地域も用意されています。
緑が豊かな地域が多いイングランドに比べ、少し水中にいるだけでもダメージを受けるノルウェー、武器や防具が制限されるヴィンランドなど、それぞれに特徴があったのは良いかと。
特にアースガルズは建造物や敵が大きく異なるデザインなので、ちょっと歩きづらさはありましたが新鮮味は感じられました。
ただ、メインとなるイングランドのロケーションは、兎にも角にも地域による差が少ないです。
どこに行っても豊かな自然が広がっていて見た目のちがいが弱く、新しい場所を訪れても印象に残る景色に出会ったという経験が薄いと感じました。
個性的な都市やインパクトのある風景も少なく、結果的にオープンワールドを歩き回る楽しさの減少につながっていたかなと。
また、砦やギリシャの遺跡など一部に高めの建物はありますが、隠れられる場所の多くは草むらなので、アサシンというより歩兵っぽいプレイスタイルなのも気になりました。
ちょっとした農村や野営地が多く、敵に一度発見されてしまうと隠れる場所がないケースも多々あり。
そのため、略奪のために殴り込みやすい地形ではありましたが、ステルスアクションがしたかったのでロケーションは総じてイマイチでした。
そうそう、新しく追加された定住地の育成は楽しかったです。
定住地はメインストーリーを進める拠点としてだけでなく、発展させると住民とのストーリーが追加されます。
仲間が増えてにぎやかになっていくし、帰ってくると「エイヴォル!」と声をかけてくれるのでがんばるモチベーションになりました。
本作は期間限定のイベントが開催されたり、アップデートで追加される新モードもあり、定住地はそのアクセスポイントとして機能していました。
執筆時点では、ヴァイキングの仲間と襲撃を繰り返すモード「リバーレイド」、強敵と戦う「達人への挑戦」がプレイ可能。
発売後にこうしたアップデートが行われているので、本シリーズは運営型に転換していくのかななんて感じたこともお伝えしておきます。
ストーリーは目的が弱く達成感も薄い。主人公は見た目よりもクレバーで詩人!
「アサシン クリード」シリーズはストーリーもプレイのモチベーションになっているのですが、イングランドの統一が主軸となっているので、シリーズのテーマであるアサシン教団とテンプル騎士団の戦いという感じは弱かったです。
また、ヴァイキングの主人公であるエイヴォルも兄であるシグルドに振り回され、何を目的として行動しているのかはっきりせず。
現代パートのキャラクターたちも何を調査しているのか、そして結果的にどうなったのかよくわからず、投げっぱなし感がありました。
さらに、終盤の展開が突如めちゃくちゃファンタジーになるため、いくら神話との距離が近い時代といえど、突拍子もない印象があるかなと。
個人的には、エンディングやスタッフロールがないので、「これで終わり?」という感じが残念でした。
クリアまでは、収集要素や強敵とのバトルなどやり残しがある状態で90時間。
本シリーズは少なくとも100時間はプレイするのですが、終盤はロケーションのマンネリ化やストーリーの置いてけぼり感により飽きてしまってエンド。
ヴァイキングというモチーフはとても好きだっただけに、もったいない感じが強く残る作品でした。
また、キャラクターについてですが、途中でめんどくさくなる兄はとても煩わしかったものの、主人公のエイヴォルはとても魅力的でした。
ヴァイキングなので見た目に粗暴な雰囲気はありますが、中身は詩人なのでクレバーな感じがあり、ちょっとした発言もやたらおしゃれ。
本作では神話と人の距離がちかいこともあり、日常会話も演劇のような趣きがあり新鮮でした。
メインストーリーで登場するキャラクターは数が多く、個々が活躍する場面は少なかったですが、クセのある人物も多くて良かったですね。
(私はアイヴァーがイチオシで、エキセントリックな性格が最高にヴァイキングしててとにかく好きでした!)
おわりに
オープンワールドを舞台にしたアクションRPGとしては進化を感じられたものの、ストーリーやロケーションに物足りなさが残る作品でした。
一方、ヴァイキングらしい略奪や豪快なバトルアクションはオリジナリティがあり、主人公も詩的な優雅さがあって中世らしい時代性を感じられるのは良いポイント。
ただ、シリーズを重ねるごとにまったくアサシンしなくなっているので、もはや「アサシン クリード」シリーズじゃなくてもいい気がしましたw
とはいえシリーズファンではあるので、期間限定イベントや大型アップデートなど、運営型の様相も呈してきているなか、今後の展開には期待したいとおもいます!