『AI: ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』ってどんなゲーム?
・インティ!インティ!パチャカマックス!
・時空を越えて半分に切断された死体が発見される、殺人事件を追うアドベンチャーゲーム
・シリーズファンを大切した作り。期待に応える安定感が魅力!
・ミステリーもの好き必見、驚きの仕掛けが組み込まれたストーリー!
・ソムニウムパートの難易度は低下。カウンセリングなので内容はやや重たくなった
・下ネタとギャグはフルスロットル!新キャラクターのクセも強いぞ!
ゲームレビュー
記事の目次
インティ!インティ!パチャカマックス!
本作は、半分に切断された死体が6年の時を経て発見されるという、連続猟奇殺人事件を捜査するアドベンチャーゲームのシリーズ2作目です。
「ハーフボディ連続殺人事件」と名付けられた本件は、6年前に右側が、6年後に左側が見つかり、しかもまったく腐敗していませんでした。
プレイヤーは、警察庁の特殊捜査班「ABIS」に所属する二人の主人公「みずき」と「龍木」として事件解決に挑みます。
捜査は、現実で現場検証や聞き込みを行うパートと、重要参考人の夢に侵入する「ソムニウムパート」で構成。
現在と過去、夢と現実を交差させながら真実に迫っていくという物語です。
ちなみに、はちゃめちゃにおもしろかった前作『AI: ソムニウムファイル』の感想は下記に。
CERO Zではありますがグロ描写はあまりなく、むしろ唐突に挟まるギャグの暴力性に振り回される最高の作品です。
なお、本作のシナリオもこちらと同じく打越鋼太郎さんが手掛けています。
前作プレイヤーが期待する要素てんこ盛り!安定感のある続編
まず、前作が好きだったプレイヤーを大切にしている続編でした。
寒いギャグを交えた会話、期待するキャラクターの活躍、そしてミステリーとしての驚き。
本シリーズの持つクセの強い特徴であり、良かった部分が「これでもか!」と盛り込まれており、プレイしていて思わず笑顔になってしまうほどファンを大切にした2作目でした。
(ネタバレになるので詳細は記載しませんが、他にも前作をプレイした方が期待するものはすべて入っているのでご安心ください!)
ゆえに、ぜひ1作目からプレイしていただきたい作品です。
お話として直接のつながりはありませんが、主要人物は前作から軒並み再登場しており、彼らの関係性や事件を乗り越えて構築された絆を知ったうえで遊んだ方がより楽しめるでしょう。
ミステリーとして驚きの仕掛けが盛り込まれた良作。でも下ネタとギャグも全開!
アドベンチャーゲームとしては、まず会話がとてもおもしろかったです。
シリアスな連続猟奇殺人事件を捜査するはずなのに、大半の日常会話がギャグ。
ノリツッコミも下ネタもあらゆるセリフが、勢いのみで流れていくこのテイストは本シリーズらしさを継続しており、実家のような安心感がありました。
ちなみに、下ネタは相変わらずフルスロットル。
ただ、主な発言者が変わったこともあり、寒いギャグテイストだった前作に比べて少し苦笑いしてしまうシーンもありました。
まぁ前作の暴力的なギャグに耐えられた方なら大丈夫です。
肝心の事件は、死体が半分になり時間を超えて発見される、という非現実的なもの。
状況の凄惨さと「どうやったのか?」という謎が提示されるため、導入からストーリーに引き込まれ、先が気になるプレイ感をしっかり作れていました。
また、終盤に訪れる仕掛けは予想していなかったのでビックリ!
秀逸なミステリー作品らしい、鮮やかなどんでん返しによるカタルシスを味わえるのですが、ネタバレしてしまうと驚きが半減してしまうのでグッと堪えておきます。
なお、注意力散漫な私はまったく違和感なくプレイをしており、巧妙な物語の構図にただただ関心していました。
何はともあれ、打越さん作品が好きな方なら必ず満足できる物語です。
キャラクターは新規・続投組ともに大活躍!期待どおりのやり取りが楽しめる!
キャラクターについてですが、続投組のクセが強いのはもちろん、新たに参戦する人たちも本シリーズらしい個性的な人物ばかりでした。
まず、新主人公の龍木くんと相棒のタマ。
龍木くんは本シリーズでは珍しい正統派のイケメンで、正義に憧れ責任感が強い一方、ネガティブになりやすいキャラクターです。
しかし、新人ゆえ意気込みだけ空回りして失敗を繰り返し、どんどん情緒不安定に……。
彼を操作するパートは物語前半なので、プレイヤーも分からないことだらけではありますが、ただでさえ複雑な事件をより混乱させるのにも一役買っていたかなと。
ただ、直前まで落ち込んでいたのに、ソムニウムパートに入った途端やたら強気な姿勢になるのは最後まで馴染めませんでした。
普段、尻に敷いているタマとの関係性が逆転するおもしろさを見せたかったのだとおもいますが、龍木くんのメンタルギャップが激しすぎて若干イラっとしながらプレイしていましたw
タマはドSっぽいのに中身は健気で、めちゃくちゃ可愛かったです。
もうひとりの主人公であるみずきちゃんと相棒のアイボゥのコンビは安定感があり。
前作時点で関係性ができていることもあり、事件の調査にも慣れていてテンポが良く、ボケとツッコミの切れ味も気持ち良かったです。
みんなが大好きな前作主人公の伊達、アイドルオタクな極道の猛馬、そしてあの鑑識官など、続投組の出番もしっかり用意されており、見たいやりとりや聴きたいセリフは必ず楽しめます。
個人的にとても気に入ったのが、イマイチぱっとしない芸人の米治。
彼の持ちギャグである「インティ!インティ!パチャカマックス!」というのが妙にツボってしまって、ゲームをクリアしてから1ヶ月以上立ちますが未だ日常会話で登場しますw
カウンセリングになり、難易度が低下したソムニウムパート
ゲームシステム面では、変更された点についての感想のみ記載します。
まず、ソムニウムパートですが、前作はパズル感のあるやや難易度高めの事件調査パートでした。
プレイヤーが選択結果を予測できないこともあり、緊張感と少しの理不尽さがあった印象です。
本作では、ダイブしたキャラクターの個人が抱えるトラウマや問題を解決するカウンセリングのようなパートになり、解決までのプロセスが明確化。
一部、謎解きゲームのようなパートもありましたがスキップもできるので、全体的に簡単になりました。
某ゲームをオマージュしたり、リズムアクションをするなど各ソムニウムパートごとに見た目やアクションの個性が強くなり、パズルとして解くものから、キャラクターを深堀りするものになった感じでした。
個人的には、悲しい気持ちになることが多かったので前作の方が好きではあったものの、これはこれで良い工夫だとおもいます。
事件の調査はというと、ポイント&クリックで行う捜査パートと新たに追加された拡張視覚パートに分割されました。
捜査パートにはサーモグラフィーやX線といった機能が増え、より多角的な感じで調査ができるように。
機能を切り替えたときにプレイヤーを驚かせようといった仕掛けも施されていたので、楽しく調査ができました。
ここで得た情報をもとに、事件の状況を再現するのが拡張視覚パートです。
探偵のように事件を推理していくのですが、後半の再現シーンはややだるさがあり。
例えば、「ダンガンロンパ」シリーズのクライマックス推理も同じような事件再現をしていますが、最初に判明した事実と推理のタイミングに時間差があるため、ちょうど良いおさらいの役割を果たせていました。
一方、本作では直前に明らかになっている内容を短い間隔で再度繰り返す感じなので、ちょっと煩わしさがあり。
とはいえ、みずきちゃんは妙にノリノリだし、コミカルなやりとりによってシリアスさが軽減されているのは本作らしさにも合っていたかなと。
ゲームボリュームは前作より増加!育成ゲームもあるよ!
さいごにクリア時間ですが、前作は30時間ぐらいでしたかそれよりは長いプレイ感でした。
前作ではソムニウムパートで悩まされてリトライをよくしていたので、そうした部分は減り、ストーリーボリュームが増えた印象です。
エンディングは複数に分岐しますが、必ずひとつの終わりに収束していくスタイルは同じ。
ただし、おもしろい仕掛けが組み込まれているので、ぜひ驚愕してください。
あと、ミニゲームとして時間経過で成長するたまごっちみたいな育成ゲーム「めだまっち」が追加。
選択肢によって姿が変化するので、コンプリートを目指して妙にがんばってしまいました。
他にも着せ替えや人生相談という本編には何ら関係のない要素も増え、キャラクターが好きなプレイヤーはより愛でられるかなと。
おわりに
やばい事件とぶっ飛んだキャラクターによって構成される、なぜかとても良質なアドベンチャーゲームでした!
ギャグの部分を多く話してしまった気もしますが、ミステリーとしての仕掛けがとても工夫されており、連続猟奇殺人事件を追っていくプロセスも謎が謎を呼ぶ展開でハラハラできるはず。
シリーズものとしての完成度も高く、だいぶ方向性はちがいますが、映画『トップガン マーヴェリック』を観たときのような期待に応えていく安心感がありましたw
前作からプレイするのを推奨するとともに、前作が大好きだったすべてのプレイヤーに楽しんでほしい名作です。
インティ!インティ!パチャカマックス!