『送り犬』ってどんなゲーム?
・女子大生を主人公にした、ほどよい和製ホラーとボリューム感で手軽に遊べるサウンドノベルゲーム
・エンディングは35種類に分岐。文体はライトで読みやすいながらも描写は丁寧!
・怖さには物足りなさがあり、展開も小さくまとまっている
ゲームレビュー
本作は和製ホラーの魅力である、背筋がぞわっとする感じが味わえるサウンドノベルゲームです。
『学校であった怖い話』の作者である、飯島多紀哉さんの短編小説が原作。
モバイル版をベースに、飯島さんの新シナリオが追加され、30種類以上のエンディングに分岐します。
なお、ダウンロード専用タイトルとなります。
読みやすい文章で語られる、ほどよい怖さのホラーノベル!
本作は、選択肢によってエンディングが分岐するサウンドノベルゲームです。
女子大学生の主人公を軸に、合コンで出会った同郷の男性や同級生、そして家族など身近な世界が舞台。
彼女のアパートのポストに毎日のように投函される差出人不明の封筒の怖さ、男性との恋愛模様、そしてちらほら現れる伝承の妖怪「送り犬」の影を軸にストーリーが進行します。
ホラーテイストではありますが、グロデスクな表現や極端に怖い描写はなく、ぞわっとしたりちょっとドキドキするぐらいの感じなので、こうしたジャンルが苦手な方でもプレイしやすいかなと。
また、文章はライトな文体の一人称で語られるのでとても読みやすく、心理描写も細かくテンポよく描かれるため、さくさく読み進められるとおもいます。
ちなみに、送り犬とは八ヶ岳に住む妖怪で、山の神さまとも言われています。
後ろをヒタヒタと付いてきて、振り向くと食べられてしまうとのこと。
振り返らずにいれば、家に帰るまでの道中を守ってくれる心強いボディガードになり、お礼になにか食べ物をあげると喜んで帰っていくそうです。
あ、途中で転んでしまっても喰われるそうで、その場合は「どっこいしょ。一休みでございます」と言わなければいけません。
(余談ですが、民話や伝承でよくあるこうした文言って、それだけでちょっと怖い感じがしますよねw)
ホラー感はやや物足りないけれど、エンディングは豊富でおもしろい!
エンディングは全部で35種類。
送り犬の不気味な雰囲気が強調されるホラーテイストが強いルート、突然ぶっ飛んだ展開になるコミカルなルート、そして別のキャラクターの視点から語られる番外編のようなルートなど多彩。
繰り返しプレイしていろいろな物語を味わいたいという気持ちになりました。
個人的には、本筋からは離れたバッドエンドっぽいルートでも、分岐後すぐに終わるのではなく、しっかりとエンディングまでのお話が描かれているのは好印象でした。
そのお陰で、ひとつひとつのエンディングが印象深いものになっていたとおもいます。
ただ、シナリオ全体としてのホラー感は少し弱く、送り犬を使った展開の深掘りももう少しあった方が盛り上がったかなと。
また、Switch版ならではの要素としてHD振動機能がうまく使われており、「ここぞ!」というタイミングで振動します。
シナリオ自体はそこまで怖くないのですが、コントローラがぶるっとしたことでビックリすることが多々ありましたw
それ以外の画面演出はやや単調だったので、もう少しメリハリがあるとよかったかなとおもいます。
ゲームシステム面では、オプションから文字表示速度や早送りの範囲、HD振動の有無や各種音量の設定変更ができます。
セーブスロットも多く、周回要素が必須の作品なので、早送りでさくさくと選択肢まで進めるのは便利でした。
なお、ふとした行動がキッカケとなるルートが分岐していくので、選択肢ごとにセーブしておくと全部回収しやすいとおもいます。
さいごに
和製ホラーの持つ背筋がぞわっとする怖さと、ノベルゲームらしいルート分岐の多様さが手軽なボリュームで楽しめる作品でした。
ホラー演出は極端でないため苦手な方にも遊びやすく、ライトな口語体による一人称で語られるので、ノベルゲームを普段あまりプレイされない方にもおすすめです。