『鬼ノ哭ク邦』ってどんなゲーム?
・輪廻転生をテーマにした、幻想的な雰囲気が特徴のアクションRPG
・「切なさ」というコンセプトにフォーカスしたコンパクトなストーリー。パートボイスなので感動シーンの盛り上がりは弱い
・バトルは序盤からやりごたえのあるボスが登場するけど、敵のバリエーションが少なく硬くて中盤以降は少し面倒に
・アートは素晴らしく、夢か現か境界が曖昧な感じは世界観にピッタリ!
ゲームレビュー
記事の目次
生者と死者、2つの世界をまたいで輪廻転生についての物語が描かれるアクションRPGです。
開発は、『いけにえと雪のセツナ』『LOST SPHEAR』といった切ない系のRPGに定評のあるTokyo RPG Factoryさん。
輪廻転生によって命が繁栄した、独自の死生観で構成された世界が舞台です。
彷徨える死者の魂を救済する調停者「逝ク人守り」である主人公は、さまざまな想いを抱えた生者・死者に出会い、やがて世界の真実を巡る争いに巻き込まれていくという物語。
なお、PS4/Switch版がリリースされています。
ストーリー構成が荒く、感動しきれないもったいなさがあり
死は終わりではなく、生と死の流れの通過点である。
本作では、こうした輪廻転生の考え方が当たり前のものとして認識されているため、全体的に寂寥感がある物悲しい雰囲気が漂っていました。
物語も重たい展開になることが多く、主人公が容赦なくNPCを殺害する描写もあり、ひとの気持ちのむずかしさを考えさせられますね。
この世界に登場する人々を通じて描かれる、特殊な死生観を生かしたやるせない結末は見どころです。
ただ、舞台設定はおもしろいのですが、メインストーリーはやや駆け足というか構成が荒い印象がありました。
前半は輪廻転生にまつわるやりきれなさや悲劇を描いているものの、中心となるキャラクターへの思い入れが弱いまま切ない別れのシーンに突入してしまい、感動に乗り切れないことも……。
後半はある個人にフォーカスした物語になっており、小さくまとまってしまった感じがありました。
エンディングは最後の選択肢で分岐が発生し、3種類のエピローグへとつながっていきます。
作中でさまざまな選択が描かれる作品なので、各エピローグは短いものの複数の終わりが見られるのはよかったとおもいます。
個人的に残念だったのは、ボイスがメインストーリーも含めてパートボイスだったこと。
ストーリーが重視されている作品だったので、没入感を高めるという意味でも、メインストーリーだけはフルボイスだったらうれしかったですね。
サブクエストは、現世に未練のある人々の願いを叶えるというものでしたが、移動したりアイテムを渡すだけのお使いイベントで残念でした。
さらに、マップ上に目標地点のマークがなく、依頼一覧を確認できる機能もなかったので、達成へのモチベーションになりづらかったですね。
敵のバリエーションが少なく、歯ごたえがストレスに感じるバトルアクション
バトルについては、現シ世と幽リ世を行き来しながらエリアを攻略していきます。
幽リ世は、輪廻転生の世界観にマッチした幻想的な風景になっており美しかったですね。
ただ、登場する敵が現シ世と同じだったので、見た目以外のちがいがなく、やや攻略が手間に感じる機会も多々ありました。
敵のバリエーションは作品全体を通じて少なく、色ちがいによる攻撃の差分もないため、終盤のバトルはかなりマンネリで面倒に感じてしまいました。
メインとなるバトルアクションについては、華やかなエフェクトによる爽快感はありました。
一方、アクションそのものについては、オートエイムやターゲット設定ができないため、奥義を空振りしてしまい、つい攻撃を当てやすい鬼ビ人(後述)を優先的に使ってしまうもったいなさがありました。
序盤から敵が硬いことも、バトルが煩わしいと感じさせる原因だったとおもいます。
ただ、低い難易度でもボス戦はしっかり回避などのアクションが求められる歯ごたえがあったことは良かったですね。
カスタマイズ性は弱いが、バリエーションは多い武器種
プレイアブルキャラクターは主人公のみで、「鬼ビ人」というNPC兼武器を最大4人編成して戦います。
鬼ビ人は、刀・槍・銃など所持している武器(全10種)が異なり、それに伴って奥義の威力や攻撃範囲も変わります。
そして、使い勝手の良さや、そのエリアの幽世ごとにある特性(遠距離のダメージが強くなる、状態異常になりやすいなど)に合わせて切り替えるイメージです。
(もちろん、見た目の好みで選んでしまっても大丈夫ですw)
各鬼ビ人の育成は、バトルで使用すると獲得する経験値(鬼魂)をスキルツリー(技奥樹)に投入して行います。
このスキルツリーのデザインはちょっと見づらいですがとてもおしゃれで、育成画面を見るといつもちょっとテンションが上がりましたね。
装備する武器は敵や宝箱などからのドロップで、ハクスラ系のように合成して強くしていきます。
武器種は多いものの各種類の個数少なく、影石という装飾品によるカスタマイズはありますがやりこみ要素としては弱いと感じました。
余談ですが、私は初期キャラのアイシャがめちゃくちゃ使いやすかったので、ほぼ彼女で戦っていましたw
さいごに
輪廻転生の死生観を軸にした、切なく閉塞感のある世界観が特徴のハクスラ要素のあるアクションRPGでした。
幻想的なアートワークなど雰囲気は魅力的だったのですが、ストーリーの練り込みが甘く、バトルアクションも煩わしさを感じる部分もありました。
ただ、コンパクトなゲームボリュームで楽しめるアクションRPGでしたし、同スタジオはテーマが一貫していて個人的に大好きなので、次回作にも期待しています。