レビュー

The Stillness of the Wind [Switch] 評価・レビュー

『The Stillness of the Wind』ってどんなゲーム?

・砂漠の寒村で、おばあちゃんの最期の日々を体験するアドベンチャーゲーム
・独りきりの生活はのんびりしていて孤独。自分にできることと対峙する静かな時間が味わえる
・次第に人生の終わりに向けて、何かを捨てていく心境を体験できる独特なプレイ感が魅力!

公式サイト

ゲームレビュー

本作は、砂漠化した寒村で独り暮らすタルマおばあちゃんの最期の時間を体験するシミュレーションアドベンチャーゲームです。
かつて、家族や子どもたちで賑わっていた村は、いまとなってはヤギやニワトリ、そしておばあちゃんしかいない寒村に……。
プレイヤーは、砂埃の舞う地で独り生きるおばあちゃんとなり、ゆっくりと最期に向けた日々を送っていきます。

牧歌的な世界観で過ごす最期の日々は、想定以上に多忙だった

「最期の時間を体験する」というと、残された人生を穏やかに過ごしていくゲームを想像されるとおもいます。
たしかに、自分だけが残された砂漠の村での暮らしは、何をしても良いのでとても自由。
しかし、タルマおばあちゃんが選択できる行動は己の動くスピードに反して多く、ゆえに牧歌的なのどかさとは裏腹に、最期の日々はとても忙しいものでしたw

おばあちゃんの1日は、朝日とニワトリの鳴き声とともに起床してスタート。
ニワトリ小屋から卵を回収し、ヤギに牧草を与えて乳を絞ってチーズを作り、畑を耕して野菜や花の種を蒔き、行商人と売買をする……。
これらを繰り返していくため、ゲームプレイはシンプルですが、ひとりの村でもやれることはたくさん用意されています。

しかし、ここで問題があります。
畑の作物に水を与えるには、少し離れた井戸まで何度も往復しなければならず、チーズ作りには手間と時間がかかり、行商人は一定時間で村から離れてしまうのです。
こうした慌ただしさがある一方、プレイヤーはおばあちゃんなので、ひとつひとつの動作がとてもスローペース。
あれもこれもと動いているうちに、あっという間に日は沈み、辺りは真っ暗な闇に包まれてしまいます。
そのため、ゲームを開始した直後のプレイヤーは、『牧場物語』や『ぼくのなつやすみ』のように朝から晩まで駆け回ることでしょうw

最期に向かって、いろいろなものを捨てていく唯一無二の体験

限られた時間のなかで、あれもこれもしたいと慌ただしく過ごしていくうちに、ふとした瞬間から「これは明日にしよう。あれは諦めよう」という気持ちになります。
この「諦めよう」という心理状態が、本作で得られる唯一無二の体験だと感じました。

普通、ゲームにおいてプレイヤーは最大限の資産を得ようと努力します。
レベルを上げたり、レアアイテムを作ったり、最速クリアを目指したり……。
しかし、本作ではおばあちゃんが強化されることはないため、さまざまなアクションをこなすと当然疲れてしまうので、必然的に何かを取捨選択する仕組みとなっています。
「野菜を育てるのは手間だからやめよう」、「今日はヤギの世話だけして寝てしまおう」といった感じ。
これは人生が収束していく哀愁とマッチしており、単調な毎日でありながら終わりに向けて着実に歩みを進めているような感覚が味わえました。

ただ、ゲームとしては至ってシンプルで、大きな展開やそれに伴った感情の動きもありません。
クリアまでは2時間半ぐらいでしたが、基本的に変化の乏しい日々を繰り返すので、ゲームプレイとしては物足りなさもありました。
メリハリとして、時々送られてくる遠く離れた家族や友人からの手紙を読み、過ぎ去りし日々への思いを馳せる要素はあるものの、全体的には静かに進行していくゲームでした。

さいごに

ゲームプレイとしてはとてもシンプルですが、人生の最期に至る心境を味わえる不思議な作品でした。
単調さはあるものの、忙しい現代社会において、時間に身を委ね、思うがままに流されていく体験には新鮮味がありました。

ABOUT ME
たこ
積みゲーマーです! ジャンルはRPG・アドベンチャー・パズルが好きですが、とりあえず気になったものは全部やる!! 読みやすくて前向きなレビューになるように心がけています! 連絡先▷info@tsumige.net