レビュー

ナイト・イン・ザ・ウッズ [Switch] 評価・レビュー

『ナイト・イン・ザ・ウッズ』ってどんなゲーム?

・見た目は可愛いけれど、中身は閉塞感のある世界で抱えるリアルな悩みを描いたアドベンチャー
・物語は炭鉱が閉鎖された寂れた田舎町が舞台、大学を中退したネコが主人公
・彼女と友人を取り巻く日々を送りながら、中盤以降は未知の恐怖と対峙するホラー展開が楽しめる!
・操作は2Dアクションでシンプルで遊びやすいけど、少しロードが長く、暗い場面やフォントの視認性も悪い
・キュートなグラフィックの動物たちや、どこか鬱屈とした音楽は最高!

公式サイト

ゲームレビュー

大学を中退し、田舎町へと帰ってきた主人公が、友人たちと交流しながら互いの問題と向き合い、町で発生している失踪事件に巻き込まれるというアドベンチャーゲームです。
物語の舞台は、炭鉱が閉鎖されて寂れた雰囲気のある田舎町のポッサム・スプリング。
ある事情から大学を中退した主人公のメイは、地元の友人であるビー・グレッグ・アンガスたちとバンドをしたり、パーティに参加したりと日々を過ごします。

しかし、彼女は次第に奇妙な悪夢にうなされるようになり、町で発生している失踪事件に巻き込まれることに……。
そして4人は、町に隠されたおぞましい秘密に立ち向かうことになるという物語です。
なお、本作はPS4/Switch/Xboxなどでリリースされています。

閉塞感や心の病を描く、リアリティがあり大人に刺さるストーリー

『ナイト・イン・ザ・ウッズ』は、可愛い動物たちが暮らすちょっと寂れた田舎町が舞台ですが、描かれる日常は現実に即したリアリティのあるアドベンチャーゲームです。
主人公は、とある事情により大学を中退して故郷へと帰ってきたネコのメイ。
彼女の周りには、実家のお仕事を継ぐことになったクロコダイルのビー、活発なトラブルメイカーのグレッグ、その彼氏で物静かな佇まいのアンガスといった友人たちが暮らしています。
奔放な主人公はもちろん、友人たちのキャラクターもクセがあり、日常会話はティーンエイジャーっぽい攻めた表現が目立つ感じ。
好みはありますが、洋画のような良いテンポで対話がされるので、独特の味わいにハマると楽しくプレイできるとおもいます。

さて、本作はテーマとして、中下層階級の人々が感じる閉塞感、思春期に生まれる心の病が語られます。
そのため、登場人物たちは家族や仕事など何かしら問題を抱えており、日々の会話や交流によってだんだんと明らかにされていきます。
家庭の事情で大学に通えなかったり、住宅ローンに苦しんでいたり、ダラダラと過ごす日々の中に憤りを感じていたり。
特に主人公のメイは、ゆっくりと終わりを迎える田舎町で若者が抱える言いようのない鬱屈とした感情や、思春期に直面する自分自身の価値に思い悩んでいるなど、負の感情をまるっと抱えた存在です。
動物たちとのどかに過ごすゲームだとおもってプレイした方は、このあたりで本作の持つ深さに直面し、「自分たちの人生は満足なのか?」と反芻することになるでしょう。

このように書くと、本作は暗い作品かと感じられるかもしれませんが、一様に重たさが支配しているわけではありません。
都会に行って大学を中退して子どものままの主人公と、田舎に残り大人になった友人たちの関わりは、すれ違うときはあるけれど確固たる友情が存在。
彼女たちが対立してしまうときは苦しいのですが、同じように社会や自分に憤りを感じている若者ゆえ、芯の部分では理解し支え合おうとしているので安心感のような余裕を持ってプレイできました。

そして、将来、アイデンティティ、家族……いろいろな所から緩やかにプレッシャーをかけられながらも足掻いて生きていく姿には、たくましさを感じられます。
ゆえに、重たいテーマや棘のある表現はたくさんある作品ですが、めちゃくちゃ乱暴に励まされるような作品だったとおもいますw
個人的には、「子どもの頃はすべてが魔法みたいに見えたけど、今はいろんなことに臆病になる」など、大人になってからプレイすると刺さるセリフも多々あるのも印象的でした。

また、中盤以降は町で起きている失踪事件やそれにまつわる秘密が明らかになり、宇宙的存在と対峙するホラーのような怖さも描かれます。
この事件は主人公に大きな影響を及ぼすことに。
その結果、鬱屈とした環境を根本的に変えられはしないけれど、周りを含めて前向きなエンディングにつなげられており、ポジティブな気持ちでプレイを終えられたのも良いポイントでした。

シンプルな作りのアドベンチャー。Switch版はロードが長くストレス

基本的なゲームプレイはシンプルで、町を移動して住民と会話し、友人のビー・グレッグ・アンガスのいずれかと過ごすと翌日になるというサイクルです。
特に目的のない日常を送るなかで、バンドでベースを弾くリズムゲーム、射的やボタンアクションなど、ちょっとしたミニゲームがあります。
個人的にはベースを演奏する際、ボタンを長押しすると音が伸びるため、弾いている感じがして楽しかったですね。
ちなみに楽曲関連では、のどかだけどどこか寂れている雰囲気のあるBGMは最高で、本作の持つ独特の空気をより強く感じさせるものになっていました。

また、ベッドで就寝すると奇妙な夢パートがはじまり、目的の動物を探してフィールドを移動します。
これが結構面倒で、画面が暗くて探しづらく、主人公の走る速度が絶妙に遅いこともあり煩わしかったです。

ただ、それらよりずっとネガティブだったポイントが、ロードが長いことです。
私はSwitch版をプレイしたのですが、シーンの切り替えだけでなく、自宅の屋根裏から2階に移動やお店に入るときなど、ちょっとした場面でも5~10秒程度のロードが入るため、かなりストレスを感じました。
そのため、今後プレイされる方は他のハードを含めて検討されるのをおすすめします。

あと、フォントはおしゃれですが、視認性が悪い点も気になりました。
会話が主軸となっているアドベンチャーなので、もう少し読みやすいとプレイ感を損ねなかったかなと。

おわりに

ゆっくりと終わりを迎える町の雰囲気、大人にも刺さるリアルな悩みを描くストーリーが斬新なアドベンチャーゲームでした!
プレイサイクルはシンプルだったので、ロードの長さや移動速度がもう少しスムーズだとより遊びやすかったとおもいます。
テーマを語りたくなる作品ですが、可愛いビジュアルや穏やかだけど寂れた味わいのある音楽など、見どころの多い個性が光るタイトルでした。

ABOUT ME
たこ
積みゲーマーです! ジャンルはRPG・アドベンチャー・パズルが好きですが、とりあえず気になったものは全部やる!! 読みやすくて前向きなレビューになるように心がけています! 連絡先▷info@tsumige.net