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十三機兵防衛圏 [PS4] 評価・レビュー

『十三機兵防衛圏』ってどんなゲーム?

・13人の少年少女が巨大なロボットに乗って戦うSFジュブナイルアドベンチャー
・ストーリーが秀逸!提示される謎と明らかにしたときの高揚感、展開を推理するサイクルが楽しい!
・複雑なシナリオだけど、全体像がわからなくても先が気になるおもしろい作り!
・繊細な2Dグラフィック!キャラクターは個性豊かに、背景は映画のようにリッチ!
・タワーディフェンス型のバトルは、戦略性よりも爽快感重視で遊びやすい!
・SFらしい壮大さと青春の眩しさが楽しめる、めちゃくちゃおすすめの1本!

公式サイト

ゲームレビュー

本作は、世代を超えて出会った13人の少年少女が「機兵」と呼ばれる巨大なロボットに乗り込み、人類の存亡をかけた最後の戦いに立ち向かうアドベンチャーゲームです。
開発は、ファンタジー世界を描いた『ドラゴンズクラウン』や『オーディンスフィア』、和風な『朧村正』など、美しい2Dグラフィックに定評のあるヴァニラウェアさん。
ゲームシステムの詳細に関しては、本作のプロローグ版のレビューで紹介しているのでご参照いただければ。

十三機兵防衛圏 プロローグ版 [PS4] 評価・レビュー『十三機兵防衛圏 プロローグ版』ってどんなゲーム? ・ノスタルジックな昭和をベースにしつつ、ロボットや時間転移といったSFの要素が...

なお、本作はPS4版が発売中、ニンテンドースイッチ版は2022年4月14日に発売予定です。

謎が謎を呼ぶ、事実を知る高揚感と推測が楽しいストーリー!

端的に説明するとすべてが最高だったのですが、なかでもストーリーはめちゃくちゃ楽しめました!
もともとSFも好きですし、少年少女が活躍するロボットものも好きとターゲットど真ん中だった私。
そうした要素はもちろんおもしろかったものの、個人的にはミステリー・サスペンス的な方面で楽しいストーリーでした。

まず多くのプレイヤーは、ゲームを開始すると戸惑うはずです。
突然途方もなく未来で宇宙服を着た男女が会話する、深夜テレビに出演中のアイドルに話しかけられる。
そして、怪獣映画のビデオ鑑賞に熱中していた少年が、別のキャラクターのシナリオでは機兵に乗ってハードな戦いを繰り広げるなど。
「少年少女が巨大なロボットである機兵に搭乗し敵と戦う話」を想定していたプレイヤーの前に、雑然とさまざまなエピソードが降ってくるのです。

こうした状況のなかシナリオを読み進めていくと、徐々につながりが見えてきます。
キャラクター同士の関係性、物語の時系列、そして怪しい大企業である敷島重工の存在。
さまざまな事象が明らかになるにつれて「そうだったのか!」という事実を知った高揚感と、「実はこうなんじゃないか」という推測のループが繰り返されるのですが、これがとにかく気持ち良かったです。

このように謎が謎を呼ぶストーリーと、そこから手に入れた真実をもとに展開を予測するというミステリー・サスペンス的な思考の流れがとても楽しく、先が気になり続けるゲームでした。
また、SF作品で多く見受けられる小難しい説明はなく、少年少女らしい日常会話がメインになるので、同ジャンルが苦手な方でも読み進めやすいとおもいます。

選択と集中で、全体像がわからなくても先が気になるシナリオ構成!

まだシナリオのお話は続くのですが、今度は構成について。
私が本作で良かったと感じたのは2つで、全体がわからなくても物語を楽しめることと、ひとつのエピソードで描かれるものが絞られていることです。
まず前者についてですが、一般的にお話を楽しむためにはアウトラインを理解する必要があります。
誰が、どこで、何をして、どうなるのか。
キャラクターが置かれている状況を把握し、そのうえで予想外の展開に驚いたり、望んでいた結末によろこんだりしますよね。

しかし、本作では主人公が13人もおり、それぞれ異なる舞台でお話が進行していきます。
そのため、プレイヤーの頭のなかは大混乱に……とおもいきや、ある工夫によってそうした複雑さを回避しています。
それが、各キャラクターのシナリオが大体場面からスタートするという点です。
たとえば教室で目を覚ます、電車に乗る直前、屋上でくつろいでいる最中など。
キャラクターごとに似たような場面から物語が開始されるため状況の把握がしやすく、別のシナリオを見てから戻ってきてもスムーズに現在の展開を楽しめる感じがありました。

また、ひとつのエピソードで描かれる目的や真実がひとつに絞られているのも良かったですね。
物語を進めていくと、よくわからない単語や出来事が次々にプレイヤーに降り掛かってくるので、何が問題なのかはおおよそつかめません。
しかし、各エピソードで話題にすること・やりたいことが限定されているため、目の前のことに集中でき、話に置いていけぼりになるといったことがありません。
そして、このように情報が詰め込まれすぎていないため、逆にじらされているようなもどかしさがあり、先述している先が気になるというプレイ感につながっていたとおもいます。

見ているだけでキャラクター性が伝わる、リッチで繊細なグラフィック!

開発のヴァニラウェアさんといえば、やはり美しい2Dアート。
『オーディンスフィア』や『ドラゴンズクラウン』といったファンタジー世界はもちろん、『朧村正』のような和風が舞台でもプレイヤーの探究心が高まるような美しい背景がたくさん登場しました。
また、キャラクターも個性的なビジュアルと豊かなモーションで、動かしていてとても気持ち良い作品ばかりでした。

現代や近未来が舞台となる本作ではというと、もちろん背景・キャラクターともに素晴らしいグラフィックでした。
過去作品のように冒険するお話ではないので、特に背景は同じものが使われるケースが多いのですが、その分、光や影のエフェクトを上手に使ってシーンを印象的に見せているのが伝わりました。
たとえば、放課後の校舎の窓から差し込む夕焼け、夜の街を照らすネオンの灯り、部室の少し埃っぽい暗い感じなど。
その場の背景に合わせてキャラクターに影がかかるのでリアリティがあり、映画のようなリッチな雰囲気を演出していたとおもいます。

キャラクターたちのとてもグラフィックも可愛らしかったです。
過去作はアクションゲームだったこともあり、激しいスピーディな動きによるグラフィックの美しさがありました。
一方、本作の場合は歩いたり考え込んだりと静的な動きが中心です。
しかし、同じアクションをしてもそれぞれ異なる見え方になっているため、ちょっと動いただけでそのキャラクターがどんな性格なのか伝わるぐらい表現が高品質でした。
そのため、アドベンチャーのような会話や思考が多いジャンルでも動きとしての楽しさを感じられるとおもいます。
また、独り言も含めてフルボイスなので、動きの豊かさと合わせてとても自然に会話が頭に入ってくる絵作りがなされていたのも良い点でした。

そうそう、「ヴァニラ飯」と称される、おいしそうなごはんのグラフィックも健在。
本作をプレイすると、多くのプレイヤーが「焼きそばパン」を食べたくなること間違いなしです!

シミュレーションらしい戦略性よりも、爽快感を重視した遊びやすいバトルパート!

本作のメインとなるのは、主人公たちの物語を進めていくアドベンチャーパート「追想編」、機兵に搭乗して戦うタワーディフェンス型のシミュレーションバトルパート「崩壊編」です。
さらに、キャラクターの情報や世界観の設定資料などを閲覧するアーカイブパート「究明編」があり、追想編・崩壊編の進行度合いに応じて開放されていきます。
クリアまでは、崩壊編もそこそこプレイして30時間ぐらいでした。

ここでは、触れていなかった「崩壊編」についての感想をさくっとお伝えします。
崩壊編はタワーディフェンス型のシミュレーションゲームです。
プレイヤーは戦いにいくキャラクターを編成し、機兵の兵装をカスタマイズ。
ステージごとに襲ってくる機械の敵ダイモスを倒していく、というバトル要素のあるモードです。

なお、本編のシナリオ進行のトリガーになっている場合もあるためプレイは必須。
そうなると「シミュレーションが苦手でクリアできるか不安」と感じられる方もいるかとおもいます。
(脳筋ゆえ、突撃以外の作戦を立てられない私も大いに心配していましたw)
しかし、本パートはシミュレーションゲームらしい複雑な戦略性ではなく、敵をガシガシ倒していく爽快さが重視されているので、考えるのが苦手な方にも安心しておすすめできる内容です。
さらに難易度は3段階から選択できる親切設計なので、ゴリゴリに殴りに行きたい方でも大丈夫……なはずです。

ただ、最初は「先が気になるから早くストーリーを進めたいのに、なんでバトルしないといけないのか」とモヤモヤしていました。
しかし、次第に範囲攻撃で敵を一網打尽にしたり、強力なビームをぶっ放す爽快感にハマり、私のように本編そっちのけでプレイする方も出てくる楽しさがありました。
また、キャラクターによる能力差はあるものの、基本的に遠距離・近距離タイプをある程度バランスよく編成すれば勝てるので、女子だけや仲良し同士など好みで選べるのも良いですね。
このように崩壊編では、ストーリー進行中は体験できなかったダイモスとの戦いの激しさが味わえるので、楽しくプレイできるモードでした。

おわりに

先が気になりながらもテンポの良さを保ちつつ、SF作品としてもジュブナイルとしても秀逸なシナリオが楽しめる傑作アドベンチャーゲームでした!
繊細に描かれたキャラクターは個性的で対話シーンが楽しく、背景グラフィックも映画のようなリッチさが感じられます。
また、タワーディフェンス型のバトルモードも爽快感があり、本編で描かれないダイモスとの激闘を自分で体感できる良いメリハリになっていました。
なにはともあれ、終始めちゃくちゃ楽しくプレイできたので、ぜひ触れて欲しい作品です!

ABOUT ME
たこ
積みゲーマーです! ジャンルはRPG・アドベンチャー・パズルが好きですが、とりあえず気になったものは全部やる!! 読みやすくて前向きなレビューになるように心がけています! 連絡先▷info@tsumige.net